児童文学の旅|
黄白色の光輝に包まれて燃えさかる球体は大地の向こうから上昇し、ジェーンは再び海のほうへ向き直った。灰色はすっかり消えてしまった。
-----スーザン・クーパー作「樹上の銀」より
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8月2日。 相変わらずの時差ぼけで、5時に目覚める。 いつもだったら二度寝するところだが、 今日は違う。 ウィルとブラァンを迎えに行ったジェーンのように、 「夜明けのアベルダヴィの海辺に佇んでみなければならないのだ。 ゴアテックスの上下を着込み、カメラをひっつかんで、ゆきみさんと一緒に外に出る。 まだ日の出には間があるようで、 モノトーンの風景の中、 ビーチの街灯が光を放っている。 真夏とはいえ、海風の吹きすさむ夜明け前の浜辺は、かなり肌寒い。 間もなく、軽装のゆきみさんが部屋に戻った。 やがて空が白み始め、カモメの群れがかん高い鳴き声をあげながら、乱舞した。 その声に包まれて、1人浜辺に立ちつくす。 現実とは思えないひとときだった。 しばらくして、Titmouseさんが出てきた。 再び2人で空を見続ける。
あいにく空が曇っていたため、いつ日が出たのか、はっきりと感じることができないまま、朝は、
なしくずしにやってきた。
気が付くと、
さっきまで、広くその姿をさらしていた干潟が、
海中に水没してしまっていた。 鳥岩のB&Bほどでないが、十分に豪勢な朝食を済ませ、 9時半にチェックアウト。 タウィンに戻りがてら、ドルーきょうだいが両親とともに泊まっていた(ことになっている)ホテルに寄ってみることにした。 本来、彼らとウィルたちが出会ったのは、このホテルの近くの丘の上であり、 ジェーンが失せし国から戻ったウィルたちと再会したのも、このホテルの前の浜辺なので、 私たちが、昨日と今朝、探索した丘も浜辺も、単なる 「なんちゃって物件」にすぎないのである。
目指す トレヴェジアン・ホテルはウェールズの詳細地図--- 正確には"Cadair Idris & Llyn Tegid"という2万5千分の1の地図---にも載っているくらいだから、かなり有名なホテルなのだろう。 海沿いの道を走ると間もなく、右手に標識が見えてきた。 ホテルはその丘の上である。 車内にゆきみさんと岬ちゃんを残し、Titmouseさんと私がその標識に従って坂をのぼった。 朝食後のくつろいだ雰囲気の漂うそのホテルは、海沿いの道から見えていたとおりの瀟洒な建物だった。 ゴルフ場を眼下に見下ろす前庭には、 パラソルが何本か立っていて、そこのテーブルで、帽子をかぶった老婦人がお茶を飲んでいた。 そう、帽子をかぶっているのである。 どんな服装だかはご想像いただけるだろう。 とにかくやたらにきちんとしているのだ、こんな朝っぱらから。 まるで(ランサムの作品に登場する)大おばさんのように。このホテルの顧客はそういう人たちなのだ。
私たちは顔を見合わせた。
私たちはそそくさとホテルを後にし、一路タウィンに向かった。 |
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郵便局は絶対見間違えようのない重々しい赤レンガの建物で、タウィン中央通りのとある角にあった。
それが済むと、次はどこに行こう、と周囲を見回した。
海が見えたらいいな、と思いつついいかげんに選んで、細い曲がりくねった中央通りを右に歩み出した。 ほどなく、その方角に進んでも海はないであろうことが判明した。
-----スーザン・クーパー作「灰色の王」より
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タウィンにはほんの15分かそこらで着いた。ATMでキャッシングしてすぐに湖水地方に向かうつもりだったのだが、ここでアクシデントが起きた。 Titmouseさんのクレジットカードが飲み込まれたまま、出てこなくなってしまったのである。 幸いにも銀行のATMだったので、すぐに窓口に行って事情を話したところ、「今から連絡するが、担当者が来るのは11時になる」とのこと。あらあら。 しかたがないので、もう見尽くしてあるタウィンの町をもう一度見てまわることにした。 手作り石けんを売っているアロマテラピーのお店をひやかし、スーパーで水を買ってから、 「『灰色の王』に登場する郵便局がどの建物なのか」というテーマで探索にとりかかる。 というのは、先日タウィンに来た後、みんなで本を読み直し、話し合った結果、 「郵便局の向かい側に、レンガ造りのそれらしき建物があったような気がする」という点で意見が一致したのだ。 しかも、「海が見えたらいいな」と思って、「現在の」郵便局から右に歩き出すと、ほんとうに海に出てしまう。 だから、スーザン・クーパーが取材に来た当時の郵便局は、現在の郵便局とは通りを隔てて反対側にあったに違いない。
行ってみると、郵便局の向かい側には、記憶どおりレンガ造りの堂々とした建物があった。色めき立って近寄ると、 しかしこれは教会だった。もう1つ、それらしき建物があったが、そちらの方はどうも個人の住宅のようである。これも違うだろう。というわけで、結局、旧郵便局は発見できなかった。 公営スポーツセンター(?)でトイレを済ませ、銀行に戻ると、ちょうど11時になっていた。 Titmouseさんのクレジットカードがめでたく戻ったところで、出発。 |
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ぼくもどるまで、くつろいでいてくれ。ティモシイ。
-----アーサー・ランサム作「スカラブ号の夏休み」より
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ここでランサムに興味の無いクーパー・ファンの皆さまへ、ご注意とお願いです。 * * * * * 高速に乗り、 Preston手前のSAで遅い昼食。 岬ちゃんのリクエストはケンタッキー・フライドチキンだった。油っこくてオバサンは参ったよ。
高速を降り、 ケンダルの町を通り抜け、湖水地方に入る。 今までのウェールズの景色も美しかったが、 平地と丘の奏でる繊細なハーモニーに関しては、断然湖水地方のほうが上である。私たちは口々に「きれいねえ♪」と言い合った。やがて、見覚えのあるホテルが見えてきた。ウィンダミアだ。懐かしい湖を左手に眺めながら走り続け、ほどなくアンブルサイドの町並みに迎えられた。このあたりまで来ると、 すでに 「冬休み」を経験しているゆきみさんの運転ぶりは、慣れたものである。
17時半、Bank Ground Farm着。
目の前にそびえ立つカンチェンジュンガを見て、私たちは思わず声を上げた。 BGFの玄関は開けっ放しになっていて、脇の棚の上に「JAPAN ROOM 2&5」というメモがあった。 それには「勝手に部屋に入ってくれ」というようなことも書かれ、傍らにルームキーが2つ置かれていた。
部屋に荷物を置いて、18時半、夕食に出発。 コニストンのホテルのパブで「ブロッコリーとポテトのチーズグラタン、サラダ添え」と「ラムの煮込み、ミント風味」をシェアする。飲み物はここの地ビール"bluebird"にした。まるで絞り立てのジュースのような、実に爽やかなビールだった。岬ちゃんは「お子様メニュー」の中からエビフライを選んだのだが、これが大きくハズレだったようで、この日以降、「コニストンのパブで食べたエビフライはまずかった」が彼女の口癖となった。 彼女のイギリス旅行の思い出が 「ヒツジのウ○コ」と「まずいエビフライ」だけではないことを、祈らずにはいられない。 |
■旅のアドバイス■「公共の交通機関だけを使って『クーパーのウェールズ』聖地巡礼はできるか?」ということを検討してみました。結論から言うと、時間があって、歩くことを厭わなければ、十分可能です。 たぶん、かなり良い旅ができるのではないでしょうか。旅の醍醐味は、のろのろ移動することにあるのですから。 もちろん、「バスを1時間待つなんて冗談じゃない」という人もいらっしゃることでしょう。 そういう人にはお薦めしません・・・。
ロンドンからの場合、一番良いのは、おそらくシュルーズベリー経由だろうと思います。
マハンフレスからは、アベルダヴィ経由のタウィン行き電車があります。月〜金の時刻表は以下のとおり。この2つの時刻表を見比べると、シュルーズベリー発は午前中がよさそう。
マハンフレスからはアベルダヴィとタウィンを経由して、海岸沿いにぐるっと廻ってDolgellauまで行くバスも出ています。 時刻表は GwyneddバスのHPで調べられます。 このバスからなら、(天気さえ良ければ) 絵葉書のようなカーデル・イドリスが見られるはず。
また、マハンフレスからまっすぐ北上してDolgellauに行くバスもあります。このバスはカーデル・イドリス登山口のすぐそばのMinfforddを経由するので、とにかく早く「灰色の王」のお膝元に行きたいという人にお薦め。(MinfforddにはホテルもB&Bもあるようです。) 私たちが石垣によじ登って「佳き湖」の写真を撮ったのは、 おそらくこのバスが走る道です。 タウィンからTalyllyn(タル・ア・フリン)を結ぶバス路線もあります。タウィン〜タル・ア・フリンは所要20分程度。マハンフレスからタル・ア・フリン経由でタウィンに抜けるバスもあります。ブラァンの通学バスだと思って乗ると、けっこう嬉しいかも。
タウィンからは
SLという手もあります。ムードという点では、バスよりも断然こっちでしょう。でもバスより時間がかかります。時刻表はTalyllyn RailwayのHPにあります。
以上のことをふまえて、「公共の交通機関で廻るクーパーのウェールズ聖地巡礼」のモデルコースを考えてみました。
バスを使えば、スノードニア国立公園、さらにはカナーヴォンやバンゴールといった、北ウェールズの名所に抜けることが可能です。 私たちよりも多くのところを廻られた夜梅さんによる「クーパーのウェールズ」聖地巡礼案内はこちら。 |
