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児童文学の旅
【原点ふたたび】 長い冬休み(3)

12月24日「ひと休み」

スーザンとペギイは、ジャガイモ、タマネギ、ニンジン、 それにかんづめの牛肉(『ツバメ号とアマゾン号』ではペミカン) ぜんぶをなべにいれて、今までぐつぐつにていたのだった。
-----6章「雪」より

晴れると冬でもこんなに美しい
コニストン湖

8時起床。雨模様。 ふゆきとマリがスーザンとペギイになり、朝食の支度。 カンバーランド・ソーセージ(イギリス人がよく食べる、 例のまずいソーセージではなく、 アンブルサイドの高い店で買った、とても美味しいソーセージ)と、 マッシュルームとスナップえんどうを炒めたもの、フライドトマト。 紅茶を飲んだが、朝っぱらからラム酒ならぬエールを飲むあらくれ者もいた。

もしも味噌が届かなかったら、今日もトン汁は作れない。 というわけで、 私がスーザンになり、 明日の予定だった煮込み鍋(シチューとどう違うか、 いまだに謎)を仕込み始める。 使うのは缶詰の牛肉ではなく、 生の牛肉、それも骨付き肉である。 「骨を取るのは面倒くさいし、 美味しいスープが出るからいいわよね」というのんき な私の言葉を聞きつけた ゆきみが、「とんでもない!狂牛病になってしまうわ」と言い、 骨から丁寧に肉をこそげとってくれた。 どうも スーザン役には、ゆきみの方が適任のようだ。

のんびり過ごす私たち
まったり過ごす(ゆきみ提供)

そんなこんなで、 ぬくぬくと雨を見ながらまったり過ごしていたら、 インフォメでもらってきたパンフレットを眺めていたふゆきが 「Coniston Launch(コニストンのフェリー)、12月24日は運行するんですって」と言い出す。 何い? 11時発ですって? もう10時過ぎてるじゃない。 急げ、野郎ども、10時半に出発だ!

コニストンの桟橋の脇にはカフェが一軒あるきりだった。 ほんとにここでいいのかしら、と一瞬不安になったが、ここなのだそうだ。 中に入るとカップルが一組いた。 古い写真が飾ってあったりして、なかなか雰囲気の良いカフェだ。 10分ほどしたら、どこかから電話がかかってきて、 「今日は強風のため船は運行中止」と言われた。 あーあ、残念。 カフェから出て、しみじみ湖を眺めると、 湖面には白波がたち、運行中止になっても仕方がない天候 である。 湖の水を手で触れてみて、写真を撮っただけで退散。 でもアヒルがたくさんいて、「ぐわっ、ぐわっ」という声がたっぷり 聞けたのが嬉しかった。

アヒルがたくさん
「ぐわっ、ぐわっ」(ゆきみ提供)

雨模様の今日はランサムから離れ、湖水地方の奥までドライブすることにした。 昔、Mountain Goat のミニバス・ツアーで行ったバターミアのあたりを、 初めて来たみんなに見せたかったからである。 絶対あのあたりはいいはず、と思いながら、ちょっと不安がよぎる。 あれは本当にそんなに美しかったのだろうか。 その後、いろいろなところを旅して、すっかり「すれっからし」になっている現在の私の目に、 どんなふうに映ることだろうか。

ケズウィックのレストランで昼食。 みんなはサンドイッチやジャケットポテトをとっていたが、 まったくお腹が空いていなかった私は、 スープだけですませた。

路地裏(私道で部外者通行禁止だった)
ケズウィックにて(ゆきみ提供)

ぐずぐずしていたら、どんどん遅れてしまって、もう3時前である。 いっけない、もうすぐ日が暮れちゃうわ。 追い立てられるようにドライブ開始。 「バターミアのあたり」という、 きわめて曖昧な私の注文に対し、 優秀なナビゲーター・ふゆきが選んだコースは"Keswick→Bassenthwaite Lake→Cockermouth→Crummock Water" というもの。そして、それはどんぴしゃりだったのである。
「ここよ、ここだわ!」
道路がV字谷の底に入ったとき、私は叫んだ。

でも、それはほんの序の口に過ぎなかった。 Crummock WaterとButtermereの神秘的な美しさ、 そのあとの荒涼たる谷間、 そして峠(おそらくHonister Pass)を下る道・・・。 まさに日の暮れなんとする中、幽玄なムードが漂い、 凄みさえ感じられるほどだった。 (ほの暗い山道を下るのが、かなり怖かったということもある。) 暗くて写真が撮れなかったことが唯一の心残りである。

それほど寒くないのでヒツジたちも元気
冬も元気に動き回るヒツジたち

すっかり堪能した私たちが帰宅したのはかなり遅かった。 でも、煮込み鍋が朝から仕込んであるから、すぐに食べられる。 肉とタマネギを炒めて、 ニンジン、ジャガイモを加えて、 ブイヨンキューブとローリエとともに煮込んだだけなのに、 イギリス在住のふゆきとマリから「イギリスの食材でも、 美味しいものができるのね」と、 微妙な誉め言葉をもらった。 サイダー(りんご酒)を飲み、 デザートには、ベリーと生クリームどっさりの冷凍ケーキを解凍して食べた。 うう、お腹一杯でぐるじい。

マリが「長い冬休み」を読み始めた。 良い傾向である。 「どこまで読んだ?」と訊きたい気持ちを必死に抑える。

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