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児童文学の旅
【原点ふたたび】長い冬休み(4)

12月25日「イグルー」

「天文台ってものは、丘のてっぺんになくちゃならないんです。」と、 ディックが説明した。 「そのほうが地平がひろくなりますから。」
-----2章「火星への通信」より

点のような私
間切る私が見えますか(ゆきみ提供)

8時起床。待望の晴天。 こんな天気ならコニストンをちまちま周り、 うろうろするのも楽しいだろうし、 間切る絶好のチャンスだ。 私は斜面を下り、カティーサーク号になったロジャになって いるところをゆきみに撮ってもらい、 おかあさんになったゆきみを私が撮った。

今日の朝食はカンバーランド・ソーセージ。昨日のとは違って、 太いのを輪切りにしたタイプ。 つけ合わせはズッキーニ、ヤングコーン、カリフラワー、 マッシュルーム。 夕べの煮込み鍋の残りもあるし、 チーズマフィンにダブルクリームをつけて食べたら、 お腹いっぱい。 こんなに食べたら、ロジャだって、 夕方のお茶までは十分にもつ気分になるだろう。

9時45分出発。Tarn Howe(小湖のモデル)へ。 これが実に美しいところで、みんな感嘆の声を上げた。 でも、ちょっとイメージが違うんだな。 子どもたちがスケートの練習をした小湖の イメージに近いのは、むしろ おととい薄氷が張っていた池の方だろう。 あの池は、少なくとも「なんちゃって小湖」と呼ばれる価値がある。

MERRY CHRISTMAS

コニストン村の教会(St.Andrew's church)の11時のクリスマス礼拝に出る。 教会内は暖房が入っていて、それほど寒くなかったが、 ほとんどの参列者はコートを着たままだった。 周りの人たちの真似をして立ったり座ったりし、 アワアワモゴモゴと賛美歌を歌い、 献金をして終わった。

グリューワインを飲みながら
左の男性は立教の先生だったそうだ
(ゆきみ提供)

礼拝の後、参加者に熱いグリューワインがふるまわれ、 にこにこふうふう飲んでいると、年配の男性に話しかけられた。 彼はその昔、日本の立教で聖書を教えていたことがあり、 しかも、英国立教学院の創設者なのだそうだ!
「なぜここに来たのか」
と訊かれたので、
「なぜなら、私の好きな作家はアーサー・ランサムだからです」
と答えると 彼は「オー!」とにっこりした。
そのあと、神戸に住んでいて、 大震災を体験したという30代くらいの女性にも話しかけられた。 教会からはお土産にグミをもらった。

いったん帰宅。 すぐさま南へ出発。今日はコニストンを一周するのだ。

"In the footsteps"の地図によると、 ハリ・ハウに一番近い聖地は犬小屋である。 しかし、何人かのランサマイトから聞いた話によると、 これはどちらかというと見つけにくい物件のようで、 犬小屋が何たるかを知らない3人を、強引に引っ張っていく のはどうかと思われた。 それに今回は「長い冬休み」の旅なのだ。 なにも「スカラブ号」にこだわる必要はない。

イグルーを探す
探検家たち

というわけで、まっすぐ イグルーを目指すことにした。ちょっとまごついたが、"In the footsteps"の説明に 従ったら、 すぐに発見することができた。 でも、このイグルーに 8人入って煮込み鍋を食べるのは無理そうだ。 定員はせいぜい3人というところだろう。

次はヤマネコ島(シュピッツベルゲン)。 車で走っているときはすぐ見えたのに、 駐車できるところがなかなか見つからず、結果的にかなり歩 かなければならなかった。 途中には水が流れていて、あたり一面がぐちゃぐちゃになっている ところもあったが、そんなものにもめげず、ひたすら 島の方向に向かって歩を進める。 木漏れ日を浴びながらのこの散策は感動的だった。 茶色を基調とする木々の間に、目を刺すような真っ青な湖面が見え、 そのコントラストはため息が出るほど美しい。 岸辺にたどりつくと、 手を伸ばせば届くようなすぐそばにヤマネコ島があった。 この距離なら私だって泳げそう。・・・夏だったらね。

すぐそこにヤマネコ島が
木の間にヤマネコ島が見えてくる

「長い冬休み」関係の重要な聖地はこれで見終わったことになる。 このあとは、ゆるゆると湖を一周した。

スウェンソン農場のあたり(どれがスウェンソンなのかは確認せず)の村は 実にいい雰囲気だった。ランサム抜きでも私好みのたたずまいである。 駐車場がそばに無いため、ゆっくりすることができなくて残念だった。

アマゾン川を渡り、対岸へ。 馬蹄湾は近くに車が止められるので、行ってみることにした。 どこを下りるのが正解なのかよくわからないまま、 とにかく強引に下りてみたら、とても美しい湾にたどりついた。 ここでの最大の収穫は、帆を下ろして停泊しているヨットを見ることが できたことである。 ここから渓流沿いに上っていくと、ツバメの谷とマス湖があるはずだが、 日が傾いて寒くなってきたので、 無理に行くこともなかろうと、その方向の写真を1枚撮っただけで満足した。

このたたずまいが好き
スウェンソン農場付近

このあとは、特にランサムの作品に関わりのある場所は無かったが、 車窓からの眺めは、最後まで私を退屈させなかった。 コニストンの周囲というのは、なんと変化に富んだ美しい場所なのかと、 正直、驚くほどだった。

今日は明るいうちに帰宅できた。 この時間なら、 大おばさんも怒るまい。 4時にお茶。 トルテリーニ(餃子のようなパスタ)を クワトロフォルマッジョのソースにカリフラワーを加えたもので和えて 食べた。しめくくりはふゆきのお得意である焼きりんご。焼きりんごとカンバーランドのエールがとてもよく合った。

帆をおろしたヨットが見える
馬蹄湾にて(ゆきみ提供)

のんびりお喋りして過ごし、夕食の支度にかかる。 (食べてばかりだ、まったくのところ。)

夕食の少し前、「ちょうどオリオン座が上るところよ」というゆきみ の声に誘われて、外に出た。 ハリ・ハウの庭はあまり地平が広くないのだが、 オリオン、カシオペア、北斗七星は自力で見つけられたし、 ゆきみにスバルと白鳥座のデネブを教えてもらった。

寒さに震え上がった私が、部屋に駆け込もうときびすを返したとき、 まだ空を見上げているゆきみの独り言が聞こえた。
「アルデバランはたぶんあれね。 ふたご座はあれかしら。でも、位置的に変だわ・・・」
彼女が星座早見表を持つ天文学者だったなんて、今の今まで知らなかった。

味噌は今日も結局届かず、トン汁計画は泡と消えた。 そのために買ってあった巨大なしめじは、 ゆきみの腕でかきたま汁として生まれ変わり、 私は豚肉を肉じゃがに仕立てた。 マリが白身魚のソテーを作り、 ふゆきが鍋でご飯を炊いた。 トランジットのときに買ったフランスワインは、 素晴らしく美味だった。 パリ経由というのは、その点では悪くない。

夕食後、 ソファーで「長い冬休み」を読んでいたマリが、 「イグルーが出てきた!」と声を上げた。

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