それは2005年夏、チェコのチェスケー・ブディエヨヴィツェという町での出来事でした。

この町に4日滞在し、周囲の観光名所を廻り、見るべきところはもうすべて見終えた私は、最後にとっておいた教会の塔に登り、4日の間にすっかり「自分のもの」になったチェスケー・ブディエヨヴィツェの町の見納めをし、宿に帰ることにしました。

衝撃の出会いはこれを眺めた後に待っていた

そういえば、この四角いプジェミスル・オタカル2世広場には、まだ歩いていない1辺があったんだっけ。最後にそこもちゃんと歩かなくちゃ。

そう思って歩いていくと、本屋がありました。それはこの町で見つけた3軒目の本屋でした。 いつものとおり、ショーウィンドウを眺め回します。私は旅先で、本屋をチェックするという習慣があるのです。とは言っても、チェコ語がわかるわけじゃなし、たいていはハリポタが平積みになっているのを確認する程度なのですが。

ウィンドウの中央に注目

この本屋のショーウィンドウの中央には、表紙にヨットに乗っている子どもたちの姿が描かれている本がありました。瞬間、私の中の何かが反応しました。目を凝らして見ると「ARTHUR RANSOME」の文字が!(チェコ語はスラブ系言語なのですが、文字は普通のラテン・アルファベットなのが幸いしました。キリル文字だったら絶対に見つけられなかったことでしょう。)

私は仰天し、そして踊り出しそうになりました。これは写真に撮っておかねば、と、デジカメで撮影してみたのですが、、、撮れた写真はどうもぱっとしません。

やっぱり手に取ってみなければ、と思い、店内に入り、書棚を見てみたのですが、言葉の壁があって、そもそもどこが児童文学コーナーなのかさえわかりません。

チェコ語版「ツバメ号とアマゾン号」

しかたがない・・・

私は勇気を奮って、本屋のおばさんに、片言のドイツ語で話しかけました。(チェコで一番通じる外国語はドイツ語なのです)
「うぃんどうニアル本ヲ私ニ見セテクダサイ」
私が指さすと、おばさんは
「どれですか? ○×(←聞き取れず)ですか?」
「イイエ・・・あ、あーさー・らんさむ・・・」
「えっ、チェコ語のを?!」
「・・・ハイ」
おばさんは店内の書棚に寄り、数冊の本を持ってきてくれました。おお、1冊だけじゃないんだ!

1冊は私がウィンドウでみつけた緑の本。たぶん「ツバメ号とアマゾン号」なのでしょう。あと2冊は青い本。「なんとかポスト」という題名だし、表紙を見れば、「ツバメ号の伝書バト」であることは間違いなし。残る1冊は、荒れた海を航海している絵からして、「海へ出るつもりじゃなかった」でしょう。題名もやたらに長いし。

これは間違いなく6巻と7巻

カウンターの上に置かれた本の見開きをそおっと開いてみると、見慣れた地図がありました。そして、想像どおりだったことがわかりました。

それにしても、こんなところでランサムに会えるとは・・・
うっとりしてチェコ語の子どもの本のページをめくる東洋人の女・・・傍で見たらどれほど怪しかったことでしょう。

ここで出会えたのは何かの縁。私は荷物が重くなるのが嫌で、ほとんどお土産を買いません。特に旅の前半では。でも、これは買うしかないだろう。3冊とも買うのは無理にしても、1冊だけは買おう。どれにする? 

悩んだ末、「王道」である「ツバメ号とアマゾン号」を選びました。お値段は199コルナ。1コルナ=約5円なので、約1000円です。チェコの物価水準は日本の約3分の1なので、チェコ人にとっては3000円ということになります。ランサムは高い。

店名は「オミクロン」

本を買うとき、「ちぇこデハ、多クノ青少年ガコノ作家ノ本ヲ読ムノデスカ?」と尋ねると、ドイツ語で「ヤー(はい)」という答えが返ってきました。嬉しかったです♪(まあ、ウィンドウに飾るぐらいなのだから、そりゃ当たり前といえば当たり前なのですがね。)

最後に、今回買えなかった「伝書バト」と「海出る」を撮影しました。「残リノ2冊ノ写真ヲ撮ッテイイデスカ?」と訊いた上でです。
ますます怪しい東洋人だ・・・

「Otakara」の文字が見えます

上↑はそのときの包装紙です。本屋の住所が印刷されています。
右→は住所部分を拡大したもの。 訳せば「プジェミスル・オタカル2世広場25番地」なのですが、格変化のせいで語尾に「a」がついていて、「プジェミスラ・オタカラ」となっています。

そうです。
「お宝」は「オタカラ広場」にあったのでした。

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