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えせバックパッカーの旅日記
肌水のいらないアイルランド(1)

準備

「アイルランドに行くの? 雨ばっかり降っているわよ。それにね、山が無くてさえぎるものが無いから、横殴りの雨が大西洋から直接吹きつけてくるの。傘は役に立たないと思ったほうがいいわ」
イギリス暮らしの長かった友人は、私にこう言った。

私は大枚ウン万円をはたいて、ゴアテックスの上下を購入した。


7月28日:曇り

上がアイルランド語、下が英語
アイルランドは遠い。でもそれ以前に、成田というところはなんて遠いんだろう。今朝は4時半起きだ。

大韓でロンドンのヒースローに飛び、さらにブリティッシュ・ミッドランド航空に乗り換え、ダブリンに到着したのは夕刻8時半。日本時間では朝4時半である。空はまだ明るいが、なんだか薄ら寒い。空港のインフォメで商会されたユースに直行。とにかく長い1日だった。もうただ寝るだけ。


7月29日:曇りのち雨

狭苦しいユースの相部屋は息が詰まる。チェックアウトして、ダブリン市内のインフォメへ向かう。

1時間待って、ようやくカウンターへ。1泊17ポンド(=現在はユーロだが、当時はアイリッシュポンドだった)のB&Bを紹介してもらう。ダブリンの中心から小型バスで10分、バス停から徒歩10分。遠いと感じる人もいるかもしれないが、東京のことを考えたら、せいぜい中野あたり(?)なのだから、遠いうちには入らないと、私は思う。町中よりも割安だし、普通のダブリン市民の気分が味わえるというものだ。

B&Bはこのバス停から徒歩10分
住所を頼りにたどり着いたのは、住宅地の中の、看板も何もない普通の家だった。どきどきしながら玄関のベルを押したら、陽気な老夫妻に迎えられた。部屋も浴室もすごくきれい。ユースとは大違いだ。やっぱりこうでなくちゃね。

ひと休みしてから町に出かける。中心地を散策し、テイクアウトのサンドイッチで昼食をすませたころ、小雨が降りだした。さて、今日はキルメイナム刑務所に行こう。現在は受刑者がいるわけではもちろんないが、刑務所が観光名所になっているなんて、珍しい。それに、これは観光マップの外側にあるのだ。一番遠くて行きにくいところに最初に行っておけば、あとが楽になるだろう。

キルメイナム刑務所
メインストリートと思われる通りには、各方面に行くバスの停留所が並んでいた。これを順番に見ていけば、乗るべきバスが見つかるだろうと思い、表示を1つ1つ確認しながら、キルメイナムの方向に歩く。ところがどうしたことか、キルメイナム行きのバス停だけが見つからないのである。 途中にあったクライスト・チャーチ(なんとなく「クライスト教会」とは言いにくいので、以下も「クライスト・チャーチ」と表記)の中を覗き、気分転換してから、さらにキルメイナム方面を目指す。 そうこうしているうちに、雨足がだんだん激しくなってきた。今さら引き返すのも悔しいので、ゴアテックスのジャケットのフードを引っぱり出し、それをかぶって歩き続けたが、雨の中、道行く人々がだんだんまばらになってくる。心細いし、足はもう棒のようだ。ようやく刑務所に着いたときには、へろへろになっていた。

英国による支配に抵抗するアイルランドの人々が
武器輸送に使った船(キルメイナム刑務所内)
刑務所内は、ガイドの説明---反英運動の歴史---を聞きながら見学する方式だった。途中にはスライド上映もあり、これまたアイルランド独立の歴史。ここに来たイギリス人は、韓国で「日本の植民地支配がいかにひどかったか」ということを聞かされる日本人と同じような気持ちになるのではないかと思った(が、私は韓国に行ったことがないので、よくわからない)。私のグループには、フランス人やイタリア人がいたが、イギリス人はいないようだった。 イギリス人はこういうところには来ないのだろうか? それとも、来ても、イギリス人だということを隠しているのだろうか?

見学を終えて、刑務所から出ると、帰りのバスの停留所は、苦もなく見つかった。あれほど遠く感じられた道のりを、バスはあっという間に戻った。パブに飛び込んで、アイリッシュ・シチューのライス添え、サラダバー、レモネードという夕食をとる。

外に出ると、雨は上がっていた。夕方の空が、やけに明るかった。

丸1日かけて、見たのがクライスト・チャーチとキルメイナム刑務所の2つだけというのは、いくら気ままな一人旅とはいえ、ペースが遅すぎると猛反省。明日はぼやぼやできないぞ!


7月30日:雨のち曇り

前日、「朝食はイングリッシュ・ブレックファストにしますか?」と訊かれ、「いいえ、アイリッシュ・ブレックファストをお願いします」と答えたら、奥さんはとても嬉しそうな顔をした。そして今朝出された朝食は・・・イングリッシュ・ブレックファストだった。。。
でもとにかくボリュームは期待どおりである。これも料金のうちだ、とばかり、たらふく詰め込み、9時過ぎ、横殴りの雨の中を出発。そのとたん、後悔した。セーターも着てくればよかった。Tシャツの上にゴアテックスのジャケットだけでは、ちょっと寒い。

政治犯として処刑された人々
(キルメイナム刑務所内)
まず最初に向かったのはトリニティー・カレッジである。"Dublin experience"というスライド上映があるというので、見てみたら、最後に「700年にわたる英国支配を脱し、ついに自由アイルランド共和国となった!」 ・・・アイルランドの歴史というのは、要するに反英の歴史なのね。それだけならまだ予想の範囲内だったが、ケネディーとレーガンの顔が大写しになったのには驚いてしまった。アイルランド系の彼らは、アイルランド人にとっては、今でもアメリカ人というより、アイルランド人であるらしい。

さてさて、本日のメインである「ブック・オブ・ケルズ」へ。スライドなんかを見て時間を食ったせいか、すでに観光客が列をなしていた。 いろいろな蘊蓄が書かれたパネルコーナーを通り過ぎると、最後に目指す本が、ガラスケースの中にうやうやしく展示されていた。たまたまその日に開かれた、見開き2ページしか見られないわけで、 「今日は当たりだったのかハズレだったのか」という、解けない疑問にとらわれてしまった。

タラ・ブローチ
お次は博物館。聖パトリックの鐘やらアーダックの聖杯やらコンクの十字架やら、ガイドブックが3つ星を付けている展示品はすべて見た。タラ・ブローチも買って大満足。外に出ると、雨はやんでいた。

だらだら歩いているうちに、 「ダブリンの丸の内」という感じの地域に入っていた。 エリートサラリーマンを相手にしている雰囲気の、 こじゃれたカフェに入ってみたら、奥のほうがセルフのお食事処になっていた。キッシュとサラダと白ワインを注文してみたら、キッシュの一切れのあまりの大きさに唖然。全部食べちゃったけれど、これは食べ過ぎかも。

ダブリンの都心
午後は8月8日初のフランス行きのフェリーの手配を済ませてから、ダブリン城へ。これはたいしたことなかった。キルメイナムのほうが面白い。

お次は セント・パトリック寺院(これは"church"ではなく、"cathedral"なので、便宜上「寺院」と訳しておく)。昨日見学したクライスト・チャーチはカトリックだが、こちらは英国国教会。入場料1.2ポンドを出したら、"Are you a student?"と訊かれ、ノーと答えると、"You are a student today."と言って、お釣りをくれた。
いい人だーーー! 国教会が好きになりそう。
ここは「抹香臭い」という形容詞を使いたくなるような、古めかしいムードに満ちていた。ジョナサン・スウィフトの胸像を一応確認。

セント・パトリック寺院の床
これでダブリンの名所はほぼ全部カバーしたことになる。唯一、行きそびれたのはギネスの工場だけ。 昨日、キルメイナムに行くのにあんなに時間をかけなければ、絶対に行けたはずなのに。

お昼に食べ過ぎてしまったので、ちっともお腹が空いていない。でも、温かいものが飲みたい。 スーパーで粉末スープの素とキウィーフルーツ2個を買ってB&Bに帰った。

部屋でお湯を沸かし、カップスープと果物の夕食をとる。寝しなにクッキー1枚と番茶。



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