えせバックパッカーの旅日記|
さて、今度こそルルドの水を汲まなければならないのだが、いったい水汲み場はどこにあるのだろう? それらしき表示があったので、そばに寄ってみたら、 "PISCINE"(ピシーヌ)と書いてある。 はて? これは「プール」という意味の単語である。いったいなぜここにプールがあるのだろうか?
うろうろしていたら、すっかりお腹が空いてしまった。 水汲みはあとまわしにして、坂を上り、レストラン探しをする。歩いてみて、つくづく思ったのだが、この町はホテルも多いが、レストランも非常に多い。しかも、ありがたいことに、全般的に値段が安い。 店の外に書いてある定食の値段を見て、 適当なところに 入ってみたら、実にウェイターが親切だった。 ビール、生野菜、牛肉の煮込み、プリンでお腹一杯になり、私はいっぺんにルルドが大好きになった。
丘の上にある城塞が、ピレネー博物館になっているというので、腹ごなしに入ってみることにした。
館内見学は、学生のアルバイトなのだろうか、
とても元気なお兄さんの解説付きだった。
けっこう面白かったのだが、展示物の内容は何一つ覚えていない。
ただ、
この後、再び坂を下る。ぼやぼや歩いていたら、病人を乗せたキャスター付きベッドを引っ張っている若者に
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夜行の疲れも残っていたのだろう。 この後、また川沿いをうろついたのだが、 私はかなりへばっていた。 とは言っても、 時間はまだまだある。 何か疲れないでできることはないだろうか? ふと気が付くと、午前中に見た「ピシーヌ」のところに来ていた。たくさんの人々が、 屋根の下のベンチに座って何かを待っている。 よく見ると「男」「女」という表示があり、 人々はそれに従って、分かれて座っている。 ようやくわかった。これは奇跡の水を浴びる場所なのだ。 私は考えた。まだ水を汲んでもいないが、 それよりも先に水浴び場を見つけてしまったのは、 何かの縁なのではないだろうか。 ちょっと怖い気もするが、これこそ、ルルドでしかできない経験だ。 心の中で「やってみろ」という声がする。 しかし、カトリック信者でもない私に、その資格があるのだろうか? いやいや、教会というところは、万人に対して門戸を開いているのだから、 ここで私が水を浴びていけないはずがない。 問題は、裸にならなければならないことだ。 お前にその覚悟があるのか? 信仰の後ろ盾無くして、それに耐えられるのか?
さんざん迷った末、最後列のベンチに腰を下ろした。正直なところ、疲れていて、座りたくてたまらなかったのである。「全身ではなく、足に水をかけるくらいにしておこう」と自分に言い聞かせながら、 待ち続けた。 目の前では、おそらく人々の無聊を慰めるためだろう、ボランティアらしきグループが聖歌を歌っている。お祈りや聖書の一節が書かれたカードなども配られる。なんだか空気がとても濃密で、精神的に負けてしまいそうだ。 「やっぱりやめよう」と何度も思った。
ふと見ると、10歳位のラテン系の女の子が、水浴びをすませて出てきた。彼女は待っていた母親を見つけると、輝くような笑みを浮かべ、駆け寄っていった。
私の番が来た。入り口を入ると、白衣を着たおばさんが「初めてですか?」と訊いてくる。
「はい。だからちょっとだけでいいんです・・・」
服を着て外に出ると、なんだか世界が変わって見えた。焦ってろくに身体を拭かなかったにもかかわらず、肌がとてもさらさらしている。
もと来た道を再び戻ると、水汲み場があった。
持っていたミネラルウォーターの中身を捨てて、 ルルドの水をたっぷり入れた。 |