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えせバックパッカーの旅日記
川の流れに身を任せ(1)

マダガスカルの地図

前置きという名の言い訳

この旅行記は私の恥さらしの記録である。というのは、これを書くに当たって、私がいかにしてぼったくられたかということを、避けて通るわけにはいかないからだ。

アンタナナリブの目抜き通り

ぼったくられた原因は私自身にある。第一に、私は旅行歴こそ長いけれど、しょせんは西欧諸国にばかり行っている「えせ」バックパッカーにすぎず、値段交渉が必要な国々に関しては素人同然なのだ。 その上、どうしても行ってみたいところがあった。しかし、それは1人では行けないところだった。しかも、普通の若いバックパッカーと違って、なまじけっこうトシをとっているだけに、経済的にはそこそこ余裕がある。 だから、行けるものなら金に糸目を付けない、とまでは言わないにしても、かなりそれに近い気持ちがあった。さらに、情報が不足していた。日英のガイドブックを読んでも、どうしたらよいのかわからなかった。ぼったくる側から見たら、本当においしいカモだったことだろう。 なにしろ本人にも「私は今、ぼったくられているのだろう」という自覚があったのだ。 こんな人間はめったにいない。

金銭交渉は下手だが、私はフランス語がわかる。 (「交渉に役立たない語学力なんか、意味無いじゃん」と言われれば、返す言葉が無いが。) 今回の旅で私が得た情報の量は、 英語だけで過ごした日本人旅行客のそれよりも、たぶん多いのではないかと思う。 この旅行記が、今後マダガスカルに行く人に、多少なりともお役に立てればと思い、あえて恥をさらす次第である。

ウィリー登場

8月1日、アンタナナリブ空港に降り立った私に、 やたら愛想の良い若い男性が英語で話しかけてきた。 タクシーの客引きかな。

彼はウィリーと名乗り、こっちが訊きもしないのに、両替所はあそこ、レートはどっちのほうがいい、と教えてくれた。 その後、タクシーへどうぞというので、いくらかと訊くと「60000Fmg(マダガスカルフラン)(=2003年当時約1200円)」という答えが返ってきた。「地球の歩き方」に書いてあった値段なので、まあよかろうと彼の勧めるタクシーに乗ることにした。

彼は私と一緒にタクシーに乗り込んだ。 あれれ、客引きじゃないのか? 

坂が多いアンタナナリブの町

アンタナナリブの町までの道路は、狭くて曲がりくねっていた。 普通、首都の空港から町の中心までの道というのは、 その国の水準と比較して、そこそこ良い道路なのではないか(ミャンマーのヤンゴンも、空港と中央駅までの部分だけは目を見張るほど素晴らしかった)と思うのだが。 まるでこの国の貧しさを物語っているかのようだ。 雰囲気としてはカトマンズに近いように感じられる。 道行く人々の顔つきが、ネパールの人々のそれに似通っているせいもあろう。 しかし、カトマンズのほうがもう少し豊かな感じだった。

「ご覧のように、この国の人々は貧しいのです」
ウィリーが、助手席からこちらに振り返って話す。
「政治家が腐敗していて、外国からの援助をみんな自分たちの懐に入れ、 国民のために使わなかったからです。 でも、去年できた新しい政府は、努力しています。 この国をきちんと開発しようとしています」

こういう話はおもしろい。 しかし、話はこれだけでは終わらず、 セールストークが始まった。 彼は個人ツアーの手配師だったのだ。

アンンタナナリブのホテルの部屋

ホテルに着くと、 彼は私の部屋にまでずかずか上がり込んできて、 3日間の川下りツアーを熱心に勧めた。 川下りには興味があった。でも、現地人ガイドと2人っきりで3日も 人里離れたところで過ごすなんて、怖すぎる。 「1人だったら絶対に行かない」という私に、彼は 「ドイツ人カップルがもうすでに申し込んでいる。その人たちと一緒だから大丈夫」と言った。 そのカップルは、6日までアンチラベ周辺にいて、自転車旅行を楽しんでいるのだという。

私は折れた。実にやすやすと。
そのドイツ人カップルってほんとうに存在するのかなあという疑問を抱きつつ。
「一番行きたいのはツィンギーなんだけど」と漏らしつつ。
そして前金250ユーロを払ったのだった。
(さあ皆さん、声を合わせて叫んでください。 「馬っ鹿じゃないのーー!?」って。はい、どうぞ。)

私は6日にミヤンドリヴァツのホテルで、 ガイド(とドイツ人カップル)と落ち合うことになった。 それまでの間、ずっとアンンタナナリブにいるのもつまらない話だ。 どうせだったら、ミヤンドリヴァツに行く途中にある、アンチラベに行こう。 私が自分の考えを言うと、ウィリーは明日11時に迎えに来て、タクシーブルース(長距離ミニバス)乗り場に連れて 行ってやると言う。それはありがたい。 また明日会いましょうと言いながら、ウィリーはようやく部屋から出ていった。 ふう。

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