[HOME]

えせバックパッカーの旅日記
ネパールの二つの町(2)

バクタプル

バクタプルの物売りたち

1時間後、バスはバクタプルに到着した。ここでバスを乗り換えるというネトラと別れる。

この町は町全体が、一種の博物館のような扱いを受けているため、 入場料ならぬ入町料300ルピー(当時のレートで約600円)を払わねばならない。 ネパールの物価に慣れてしまっていた私には、この金額は目の玉が飛び出るほど高く感じられた。が、すぐに、それだけの価値があるということがわかった。

「ああ、この町ではゆっくり歩ける・・・」

路地裏の奥へ

後ろから車の警笛に追い立てられることがなく、また商品を眺めていても店の人はあまり声をかけてこない。ここでは自分のペースで、心ゆくまで町歩きを楽しむことができそうだ。

とりあえず、町の中の3つの広場を結ぶメインストリートを、 恥から端まで歩いてみて、それから欧米人仕様のレストランの屋上テラスで、眺望を楽しみながらオムレツを食した。温かい日差しが降り注ぐ、うららかな午後のひとときだった。

食後、ゆっくり休んでから、再び町歩きを始める。メインストリートを二回も往復すると、さすがに飽きてくる。ちょっとそこの脇道に入ってみよう。

お堂の前で遊ぶ子供たち

と、突然、私の耳に可愛い歓声が飛び込んできた。狭い路地裏は、子供たちの天国だったのだ。年かさのリーダー格の子を中心に、規律正しく遊んでいるグループもあれば、飽きもせずひたすら走り回っている子供たちもいる。きょとんとたたずんでいるだけの子もいるし、何かよほど気に入らないことがあったのか、泥だらけになって地べたを転がりまわって、泣き叫んでいる子もいる。

私は遠慮しながらも、数枚の写真を撮った。撮りながら、写真ではだめだと思った。にぎやかな子供たちの声が聞こえてこその情景なのだ。私は憑かれたように次から次へと路地に入っていった。どこの路地に入っても、私は子供たちの歓声に包まれた。

素焼きの壺を作っている

メインストリートに出ると、そこはスイッチを切ったかのような、静かな大人の世界。路地に入ると、歓声のこだまする子供の世界。私はこの二つの世界を、意味もなく行き来し、その音の違いに酔いしれた。

日本の町からこういう声が消えてどのくらいになるだろうか。日本にだって、私が小さかったころは、こんなふうに遊ぶ子供たちがたくさんいたんだ・・・。

路地裏に入り込んできた「ヘンな外人」である私に対して、「ファイブ・ルピー」と言って手を出す子供も、確かにいた。が、私の感動はそんなことで そがれはしなかった。

* * * * * * * * * * *

再びオンボロバスに乗って1時間。
カトマンズの空が暮れなずむ頃、タメル地区を歩く私の耳に飛び込んできたのは、スピーカーから流れる奥田民生の歌声だった。<完>(1997年12月)

  前頁へ

このコーナーのトップへ
HOME