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えせバックパッカーの旅日記
イスタンブールの天国と地獄(2)

天使の誘惑

目が覚めると夕方。 昼間の出来事を思い出して憂鬱になる。 でも、夕ご飯を食べないわけにはいかない。

勇気を奮って外に出て(幸いなことに、今回はストーカーまがいの奴は来なかった)、欧米人パッカー御用達というふれこみのレストランを 目指して歩いていると、日本人の女の子に出くわした。

地下宮殿の「メドゥーサの首」
上下を逆にするとよくわかります
タカコと名乗るその女の子は、なんでも外語大の学生で、北欧に留学中なのだが、夏休みに気分を変えようと、トルコにやってきたら、イスタンブールがすっかり気に入ってしまい、居着いるのだという。オモロイ子だなあ。
昼間のストーカー男に、神経をズタボロにされて、すっかり弱気になっていた私は、同じ日本人である彼女とちょっと立ち話をしただけで、癒された気がした。

ひとしきり話に花を咲かせた後、彼女はこう言った。
「これから知り合いのところに行くんだけど、一緒に来ませんか? みんなで一緒にご飯食べるんです。旅行者もしょっちゅう来るから、情報交換もできると思いますよ」
へえええ。面白そう。
やっぱりイスタンブールは旅行者のメッカだけのことはあるのねえ。
ただでご飯が食べられるのもオイシイけど、情報交換ができるというのはもっと魅力的。
私は誘いに乗った。

連れて行かれたのはこぎれいなアパート(?)の一室だった。 部屋の主らしき30歳ぐらいのトルコ男性に「ようこそ!」と歓待され、「今日はずっと暇なのですか? もしよかったらこの後飲みに行きませんか」と誘われる。今日はこれから別にすることはないし、大勢で飲みに行くのも悪くないと思い、 「イエス」と答えると、奥のソファーに案内された。

特に何があるわけでもなく、ぼーっと座っているだけ。たまにタカコがちょこちょこと話しかけてくる。やがて、人が集まりだした。トルコ人の男性が5、6人、日本人の女の子と男の子が1人ずつ。

とりあえずビール。
しばらく待っていると、ようやく料理が出された。 大皿に骨付きチキンのローストがごろんとのっかっていて、他には何の付け合わせもない。
うーん、これだけ・・・?
しょせんタダ飯だしなあ・・・。
飲み物は何にするかと訊かれた私は、甘いチャイにうんざりしていたので、水を頼んだ。 チキンをちょっとつまみ、水を飲んでいると、 女の子が1人、話をしていたトルコ人男性と連れだって出ていくではないか・・・
その様子を見ていた男の子が、目を丸くして
「あれれーっ・・・ そ、そういうことなのー?」
とつぶやく。
口には出さないものの、私も思った。そういうことなのか・・・
私はそういう気はないの。ご飯はいただいたし、もう今日は帰ることにしよう。

部屋の主らしき男性に、「今日はもう帰ります」と言うと、彼は血相を変えて怒った。
「あなたは飲みに行くと言ったじゃないか!!」
んなこと言われたって、予定は未定であって決定じゃないのよ。状況というのはその都度変わるものなの。
「さっきビールを飲んだら酔っぱらってしまったんです。もう飲めません」
こう言うと、彼は激怒し、「出ていけ!」とどなった。
はいはい、出ていきますよ。

まっすぐホテルに帰って、さっさと寝た。やれやれ。

今日の私はなんという馬鹿者だったのだろう。 「旅先では、下手に人を信用するものではない」というのが、個人旅行の大原則なのに。

・・・それにしても、タカコ、あんたはイスタンブールくんだりまで来て、何してるのよ。 

* * * * * * * * * *

トルコでは、現地の男性と恋愛して、居着いてしまう日本女性が、けっこういるそうです。日本人相手のぼったくり商売人の手先のようなことをしている女性もいるらしいということも聞きました。詳細はこちら。タカコがこの交際クラブ(?)で果たしていた役割も、(結果的には)似たようなものです。

なぜトルコの男性と恋愛する日本女性が多いのか? 以下は私の推測です。
もともとトルコ人は親日的だから、 日本人の方だって悪い気はしない。自然、トルコ人に親しみを抱くことになる。しかも、 イスラム教徒にとって、ひとり旅の異教徒の女性は「誘ってくれ」と言って歩いているようなものだから、彼らは遠慮せずにアタックしてくる。 しかも、トルコの男性は彫りが深くてイケメンが多い。日本女性は、イイ男に猛烈に言い寄られることに慣れていない。よって、簡単に陥落する。

もちろん恋愛は自由です。でも、日本女性が「現金輸送車」と呼ばれているということを聞くと、「ちょっとは気を付けてね」と言いたくなってしまいます。 最初はお金がらみの人はそれほどいなかったかもしれないけれど、結果的に、日本女性とつきあったお陰で金銭的に潤う人が少なくなかったために、いつのまにか「日本の女は金蔓になる」という評判が広まっていったのでしょう。

そういう出会いの中にだって、「真実の愛」が見つかる可能性があることも、決して否定しませんけれど。


地獄の釜の蓋が開く

午前3時。
身体の変調を感じて目覚めた。お腹の具合が変だ。
トイレにかけこむと、ひどい下痢をした。
いったいどうしたんだろう。
あ゛ーーーーーっ!! あのときの水!!!
思えばあの水、生ぬるくて美味しくなかった。あれはミネラルウォーターなんかじゃなくて、生水だったんだ!
なんたる不覚。
もとはと言えば、ただで夕食をごちそうになろうなんて、あさましい魂胆がいけなかったのだ。タダほど高いものは無い。 しかも、間の悪いことに、 私は普通の胃腸薬こそ持参していたが、正露丸は持っていなかったのである。なんたるオバカ。

自分を呪いながら、トイレに何回もかけこんで過ごしたその夜は、 まさに地獄の一夜だった。
お願いだから早く治ってちょうだいよ〜!!!

早く治らないと困る事情があったのである。

それはアエロフロートのリコンファーム。
帰国便の72時間前、 つまり明日の午前11時までにアエロフロートのオフィスに行かなくてはならないのである。(注: 当時、アエロフロートは、電話でリコンファームすることができず、直接オフィスに出向かなければならなかった。)

絶対絶命。



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