えせバックパッカーの旅日記|
何もわからないポルトガル語のテレビを点け、 ベッドに横になって本を読んでいるうちに、いつしか眠りに落ちていた。 11時、目覚ましの音で起き出す。 11時40分、フロントに下り、 鍵のかかった正面玄関を開けてもらい、 ブザーの場所を教えてもらってから 、夜の町を歩き出す。
ありゃぁ、ちょっとやばいかも・・・ こんな地方都市だし、しかも聖夜なのだから、追いはぎやひったくりが出るはずがないと、私はたかをくくっていたのだ。 一応の用心のために、ショルダーバックをたすきがけにした上に、ゴアテックスのジャケットを羽織っておいて、ほんとうによかった。 カテドラルの前に行ってもそれほどの人出はなく、 ちょっとあてがはずれた気がしたが、 聖堂内に入り、真ん中よりもちょっと後ろの席に座って待っていたら、12時数分前からどんどん人がやってきて、12時ぴったりにミサが始まったときには、席は9割方、ふさがっていた。 ミサはマイクがあまり良くないせいか、音響効果がいまひとつで、ちょっと期待はずれだったが、 みんなに合わせて立ったり座ったり、十字を切ったりしているうちに、つつがなく終わった。 意外だったのは、教会への献金をする人が少なかったこと。そして、「聖体拝領」(キリストの身体になぞらえたウェハースのようなものをもらうこと)に行く人が半分ぐらいしかいなかったこと。 フランスのイブのミサだったら、もっと多くの人が献金し、聖体拝領に行くのに。
帰国後、その方面に詳しい人に訊いてみたところ、 信仰の篤い地域では、その年に「告解」(神父に「私はこういう罪を犯しました」と告白すること)をしていないと、ミサのときに聖体拝領をしない、という人の割合が高いのだそうだ。 フランスの場合は、1年のうち、イブにしかミサに行かないという「なんちゃって信者」が多いから、 「せっかくミサに出たことだし」という軽いノリで聖体拝領に行く人が多いのだろう、ということだった。 献金も、ふだんはしていないので1年に1度くらいはしておこう、ということなのかもしれない。
ミサ終了後、人々はまっすぐ出口に向かわずに、祭壇のほうに向かって行く。いったい何があるのだろうと思ってついていってみると、
司祭が幼な子キリストのお人形を抱いていて、
みんな順番に、そのお人形にキスしていくのである。
カテドラルから出ると、杖をついたおばあさんが1人で歩いていた。 後ろからそのおばあさんを追い抜きながら、 やっぱり聖夜には追いはぎやひったくりは出ないのだろうと思った。 午前1時、ホテルに到着。玄関のブザーを鳴らして入れてもらう。 熱いシャワーを浴び、十分に温まってから就寝。 |
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クリスマスの朝が来た。
「今日はクリスマスだから」 そう言いながら彼女が指さしたのは、ボロ・レイ、ポルトガルのクリスマス・ケーキだった。 これは「王様のお菓子」という意味で、ガイドブックによると、クリスマスだけではなく、1月の初旬まで、ずっと食べるものらしい。 ポルトガルに来てから、お菓子屋さんのウィンドーで何回か見かけていたが、見るからに甘そうだったので、ずっと敬遠していたのだった。恐る恐る口にしてみると、意外や意外、それほど甘くない。これならいくらでも食べられる。 私としては珍しく、お代わりまでしてしまった。
「今日はとっても寒いわ」 と、ホテルのおねえさんが言っていたが、ほんとうに身を切るような寒さである。 バス・ターミナルは、切符売り場以外、すべて閉まっていた。これではコーヒーの1杯も飲めない。 9時半、がらがらのバスは定刻どおり出発した。驚いたことに、このバスには暖房がなかった。じっと座っていると、冷気が足元からしんしんとしのびよってくる。膝掛けが欲しい。 寒いときは燃料を補給しなくてはならない。 私はクッキーの箱を開け、むしゃむしゃと食べ始めた。
15分歩いてバスターミナルに戻る。まあ、次回のコインブラ訪問の予習にはなったから、いいことにしよう。 でも、この寒さには参ったなあ。何か飲みたい。水は持っているけれど、水を飲んでも暖かくはならないのである。 あーあ、日本だったら自販機があるのに・・・。あれさえあれば、コーヒーでも紅茶でも、温かいものが飲めるのに。 待ちこがれたナザレ行きのバスがやってきた。驚いたことに、ぴかぴかの二階建てバスだった。うきうきと二階に上がる。残念なことに一番前の座席はタッチの差で取られてしまったが。そして、ぴかぴかであっても、二階建てであっても、暖房は無いのだった。出発してしばらくすると、薄日が差してきた。身体がほんの少しずつ温まってくる。やれやれ助かった。それでも相変わらずうすら寒くて、身体の中に燃料を入れる必要を感じる。燃料はクッキーしかない。今日は朝から甘い物ばかり食べていて、もう口のほうは飽き飽きしているのだが、この寒さと戦うには、食べるしかない。
ナザレだ! ナザレに着いたんだ! バスを降りた私を待ちかまえていたのは、客引きのおばちゃんであった。真冬でも客引きがいるなんて、この町はただ者ではない。 おばちゃんのプライベートルームは十分清潔だったが、建物自体が冷え冷えとしていたのが致命的だった。 ノーと言うと、おばちゃんは、近所のホテルに私を引っ張って行った。そのホテルはフロントに入ったとたん、ほんわか暖かかった。 ここならいいかもと思いながら見せてもらった部屋も、ほんわか暖かい。それでも、エアコンが付いていないのが不安だったので、フロントの人にそう言ったら、ヒーターを貸してくれると言う。暖房があって、3人泊まれる部屋(ダブルベッドとシングルベッドが置いてあるので)を1人で使って、トイレ・バスタブ付きで25ユーロ、しかも朝食込み。悪くない。ここにしよう。(注: 私はうかうかと向こうの言い値でOKしてしまったが、連泊するなら値引き交渉するべき。冬のポルトガルは、どこのホテルも閑古鳥が鳴いているのだから。) 客引きのおばちゃんは、私が「ここにする」と言うと、「良かったわねー」みたいなことを言って帰っていった。
朝からまともな食事をしていない私は、一刻も早く、何かを食べたかった。町の中心の広場に面した、 見るからに外国人観光客向けのレストランに飛び込み、「バカリャウ・コジート(ゆでたタラ)」に挑戦してみる。食べた結果、特に美味だとは思わなかったが、ともかくもようやく、甘くないものを口にすることができたのだった。燃料を身体の中にしこたま詰め込み、さらに白ワインも飲んだので、1日中冷え切っていた身体が平常モードに戻ってきた。 夕暮れの海を眺めながらのんびり散策する人々を尻目に、まっすぐホテルに帰る。 部屋に戻るとすぐにお風呂の準備にとりかかった。熱めのお湯に身を浸すと、四肢がじんじん温まってくる。あ゙〜〜〜、極楽極楽♪ これで身体の芯までぽっかぽか。終わりよければすべて良し。今日はもう十分だわ。まだ9時だけど、さっさと寝てしまいましょう。 時差ぼけを直すのは明日からでいいわ。<完>(2004年12月) |