「フランス語版指輪物語」のトップへ戻る
ホビットたち | 他の種族 | 品物 | 地名 | 文体について | 抽象名詞



ホビットたち Hobbits(オビット)
この綴りは「オビ」と発音するのが普通ですが、PJのLotRでは「オビット」と発音しています。
小さい人 ビルボ   フロド   山の下   サム   メリー   ピピン
  サックビル・バギンズ   マゴット ロージー

原作 瀬田訳 仏語訳(発音) オババのコメント
Halfling 小さい人 Semi-Homme(スミオム)

"semi"は「半分」という意味の接頭辞。 英語とおんなじです。「セミプロ」の「セミ」ね。

"homme"は総称的に「人間」を表すときに使われる単語です。その意味で使われるときはたいてい単数形で、定冠詞"le"を付けて、"l'homme"と書いて、「ロム」と発音します。(最初のhを大文字にして"Homme"と書くことも多い。)フランス語では"h"は発音されないので、"homme" は母音で始まることになり、定冠詞の"le"は"l'"という省略された形になるのです。 かのパスカルの「パンセ」の冒頭「人間は1本の葦にすぎない」は、原文では"L'homme n'est qu'un roseau." ロム・ネ・カン・ロゾー。すらすらっと言えるとかっこいいかも?!
また、この単語には「男」という意味もあります。つまり英語の"man"とおんなじわけ。 "living man"(=生きている人間の男)は"homme vivant"です。

Bilbo Baggins ビルボ・バギンズ Bilbon Sacquet
(ビルボン・サッケ)

"sac"は英語の"bag"
それはいいけど、なんでよりによって 「ビルボン」「フロドン」なの?
ちなみに「フロドの旦那」はもちろん「ムッシュー・フロドン」。

[追記]
ギリシャ神話のキューピッドが フランス語で"Cupidon"だということを発見!! いや、フロド=キューピッドだなんて、なんの根拠も無いんですけど。 ただね、小文字、つまり普通名詞としてのキュピドンの意味として、 「美少年、美青年」とあったので、オババはあのイライジャ・フロドの ぱっちりお目々とぴちぴちほっぺを思い出してしまったの。(^_^;)

[追記]
さらに発見。 エジプトの「ファラオ」は、フランス語では"pharaon"なのです!  フランス人は「オ」で終わるのが嫌いだということが、だんだんはっきりしてきました。

[追記]ついにビルボン、フロドンの謎が解けました!!
ロマンス諸語の語彙の多くはラテン語にその語源をたどることができるのですが、名詞の場合、その主格ではなく、対格(直接目的語。日本語では一般に「〜を」に相当する)が引き継がれたのだそうです。
たとえば「キケロ」。フランス語ではCiceron(スィセロン)といいます。これは主格Ciceroではなく、 対格Ciceronemがフランス語に残ったせい。Ciceronemの語尾の-nemのうち、-emは時の流れとともに落ちてしまったけれど、-nだけは残ったのです。【出典:逸身喜一郎著「ラテン語のはなし」(大修館)】
つまり、BilboやFrodoそのままではなく、BilbonやFrodonという名前にすると、少なくともローマ時代ぐらいまではさかのぼった気分になれるということなのでしょう。「たかが-n、されど-n」なのであります。

Frodo Baggins フロド・バギンズ Frodon Sacquet
(フロドン・サッケ)
Underhill 山の下 Soucolline
(スーコリーヌ)
英語の"under"はフランス語で"sous"、 "hill"は"colline"。
Sam /
Samwise Gamegee
サム /
サムワイズ・ギャムジー
Sam(サム) /
Samsagace Gamegie(サムサギャッス・ギャムジー)
"sagace"は文語で「(観察・判断などが)鋭い、的確な」。
フランス語の2人称には、親しい間柄で用いる"tu"と、 敬語的な"vous"の2種類があります。 もちろん、サムはフロドのことを、尊敬をこめて"vous"と呼んでます。
Merry /
Meriadoc Brandybuck
メリー /
メリアドク・ブランディバック
Merry(メリー) /
Meriadoc Brandebouc(メリアドク・ブランドブック)
"brande"は「下草(ヒース、しだなど)」、 "bouc"は「オスの山羊」の意。
メリーとピピンは、フロドに対してタメ口用2人称である"tu"を使ってます。
Pippin / Peregrin Took ピピン /
ペレグリン・トゥック
Pippin (ピパン) /
Peregrin Touque(ペレグリン・トゥック)

"touque"は「ブリキ缶」の意。
"Peregrin"の"i"の上には点が2つ並びます。 点1つの普通の"i"だと、「ペレグラン」になってしまうから。
ところで、「ピピン」と言ったらフランク王国の宰相の名前。
と思っていたら、 映画でメリーが「ピパン」と呼んでいました。 あっ、そういえば"i"の上に点が1つの "in"の発音は「アン」になるんだっけ!と納得したのですが、 フランク王国の宰相ピピンの発音はどうなんだろうという疑問が湧いてきて、 確認してみたら、綴りは"Pepin"(eの上にアクサンテギュが付く)、 発音は「ペパン」。 
新たな疑問。 教科書で習った「ピピン」という発音は、いったいどこから来たんでしょう?  日本の世界史の教科書に載っている地名や人名は、原則的にその国の発音 を採用しているはずなんですけど。

Otho Sackville-Baggins オソ・サックビル=バギンズ Othon Sacquet de Besace(オトン・ サッケ・ドゥ・ブザッス)

「おとん」がいるなら「おかん」もいて欲しいところですが、 連れ合いは「ロベリア」のままなんだわ(笑)
(ちなみに、息子のロソ(Lotho)は、ご想像どおり「ロトン」です。)
そもそも"-ville"という綴りはとてもフランス語っぽいのです。 トールキンのことだから、わかっていてあえてそういう 苗字にしたのでしょう。 英語の"bag"に対応するフランス語の"sac"が英語化してできた"sack"という単語を 使ったこと自体、一種の言葉遊びでしょうし、 かなり凝った作りの名前です。
翻訳者もその意を汲んで、頑張ってます。
"besace"は「(托鉢修道士・乞食などが振り分けにかつぐ)ずだ袋」だそうな!
苗字に"de"が付くのは貴族。 もっとも、成金が箔をつけるために"de"を買うことも珍しくなかったそう です。

[追記] エリザベス1世のいとこに トーマス・サックビルという人がいるそうな。 サックビル家は、イギリス最大の個人邸宅であるノウルを所有していました。 トーマスの子孫にヴィタ・サックビル=ウエストという女流作家がいて、 トールキンと同い年。その夫ハロルド・ニコルソンは 外交官で政治史家、でもって、オックスフォード出身。 こりゃ間違いなくトールキンの友達ですね。
「本の中で、君の奥さんの名前使わせてもらったよ」「おお、じゃあ読んでみなくちゃな」 (数日後)「読んだぜ。よりによって、あんな奴の名前に使ったのかよー」「悪い悪い」 ・・・と、オババの妄想は限りなく膨らむのでありました。
ところで、フランスにも「ブザッス」という名家が実在するんでしょうかね。もしも実在していたら、すごいんだけど。

Magot マゴット Maggotte(マゴット)

フランス語の "magot"は「へそくり」「(陶製・硬玉製の日本や中国の)小人物像」 「醜い小男」など、妙ちくりんな意味を持つ単語です。 パリにある有名なカフェ「レ・ドゥー・マゴ」(東京・渋谷のBUNKAMURAに 支店があります)の「マゴ」です。 意味が変にホビットにかぶるから、綴りを変えて、 「マゴット」という発音の方を生かすことにしたのでしょう。

[追記] この件に関してはグワイヒアさんのHPこのコーナーの「マゴットさんち」をご覧下さい。

Rosie /
Rose Cotton
ロージー /
ローズ・コトン
Rosie(ロージー) /
Rose Chaumine (ローズ・ショーミーヌ)

英語の"cotton"はフランス語では"coton"。
てっきりそのまま使っていると思ったのに、なんで変えたんだろ?と思って 調べてみたら、 "chaumine"は「藁葺き小屋」という意味のやや古めかしい単語ということ でした。
ホビット的なこの単語、翻訳者はどうしてもどこかで使いたかったのでしょう。

[追記]
"cotton"は「綿」ではなかったのです!!! 詳しくはグワイヒアさんのサイトこちらへ。 "chaumine"という訳語はどんぴしゃだったのね。


HOME > 療病院の中庭TOP > フランス語版指輪物語TOP
> ホビット | その他の種族 | 品物 | 地名 | 文体について | 抽象名詞